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「S.H.Figuarts マンダロリアン シーズン2」
杉山すぴ豊の洋画フィギュア論vol.11
「S.H.Figuarts マンダロリアン シーズン2」
2021.08.27
“アメキャラ系ライター”杉山すぴ豊氏が、独自の視点からシネトイ(洋画フィギュア)を語ります。
気に入ったヒーロー映画やモンスター・ムービーのキャラを手元においておきたいという人は多いハズ。BANDAI SPIRITSのコレクターズアイテムブランド「TAMASHII NATIONS」さんの洋画フィギュアはまさにこうした願いをかなえてくれます。その魅力を映画ライターの視点で語っていきたいと思います。
今回フィーチャーするのは大人気の「スター・ウォーズ」の実写ドラマシリーズ『マンダロリアン』から主人公のマンドーことディン・ジャリンと、ボバ・フェットです。
『マンダロリアン』は「スター・ウォーズ」の世界観をベースにした、ディズニープラスの実写ドラマシリーズです。2019年にシーズン1、2020年にシーズン2が配信開始されました。映画『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983年)から5年後の世界を描きます。
『ジェダイの帰還』で銀河帝国は反乱軍によって一応倒されましたが、まだ帝国の残党は残っており、新たに立ち上がった新共和国も必ずしも銀河全体の統治に成功しているわけではない。混乱の時代です。その世界に惑星マンダロアにルーツを持つ“マンダロリアン”と呼ばれる武闘集団がいました。彼らは独自の教義を持ち、光線銃の攻撃やライトセーバーの攻撃をものともしないベスカー鋼という最強金属で造られた仮面&アーマーの“マンダロア装甲”を装着しています。そして戦闘の達人。このドラマはマンダロリアンの1人であり、賞金稼ぎ・傭兵として生きていたマンドーという男の冒険を描きます。この『マンダロリアン』は、映画版で人気のあった「ボバ・フェット」というキャラを意識して作られたシリーズです。
ボバ・フェットは1980年公開の『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』にてスクリーン初デビュー。ボバ・フェットの魅力はまずはなんと言ってもその外観、マンダロア装甲姿にあります(劇中では素顔を見せない)。そして卓越した戦闘のスキルを持つプロの賞金稼ぎだということ。善悪ではなく、あくまで引き受けた仕事として主人公たちを追い詰めます。
一躍人気キャラとなるのですが、次作『ジェダイの復讐』ではほとんどかっこいい見せ場もなく“退場”してしまうんですね。確かにストーリー上は重要な役割を持つキャラではないんですが、ファンは納得しない。
そうした声に応えてなのか『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)から始まる新3部作では、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002年)で彼の“父親”であるジャンゴ・フェットが登場します。ここではボバ・フェットの時と違い仮面をとった姿も見せています。マンダロア装甲のカラーリングが違いますが、ボバ・フェット的なものを復活させたかったのでしょう。本作でボバ・フェットは「ジャンゴ・フェット」のクローンだったことが明らかにされます。
2015年からディズニーによる『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を起点とする3部作がスタートします。残念ながらこちらの方にボバ・フェットに直結するメイン・キャラは出てきませんでした。しかし、ディズニープラスで展開される、栄えある実写ドラマシリーズの第1弾に『マンダロリアン』が選ばれたわけです。これはとても正しい判断だと、僕は思います。
『帝国の逆襲』『ジェダイの帰還』におけるボバ・フェットをみるに、“キャラとして魅力的だが、ジェダイの騎士を中心とするストーリーでは活躍が難しい”わけです。従って新しい「スター・ウォーズ」に“なんちゃらフェット”を出したところで、十分な見せ場を与えられない。これはこれでファンにとってはストレスです。ならばいっそこのキャラを主役にした物語を作った方がいい。
この試みを実行するのに、映画とは別の配信ドラマという出口があったことは最適かつ最高のチャンスでした。とはいえこれをボバ・フェットで作ると、今までの流れとの整合性もあるから思い切ったものが作れないはず。ならばボバ・フェットのイメージを踏襲した新キャラならどうか?そうして生まれたのが『マンダロリアン』です。
これが可能だったのは、ファンが求めているのは、マンダロア装甲に身を包んだアンチ・ヒーローがかっこよく活躍する物語であり、必ずしもそれがボバ・フェットである必要はないわけですから。
そこで新たなる主人公マンドーを登場させます。
この狙いが当たり『マンダロリアン』は北米を中心に大ヒットします。
そして『マンダロリアン』シーズン2。先ほど“必ずしもそれがボバ・フェットである必要はない”と失礼なことを書きましたが、やっぱりマンドーのかっこ良さに触れると、改めてボバ・フェットのことも思いだす。
そんなファンの気持ちを察してか、なんとシーズン2からボバ・フェットが登場し、マンドーと共闘するという胸アツの展開となります。マンドーとボバ・フェットの2ショットは、ある世代にとっては某特撮ヒーローの1号と2号の共演ぐらいインパクトがありましたね(笑)。
さて今回のS.H.Figuartsですが、マンドーとボバ・フェットのフィギュアがそろって登場です。
マンドーのフィギュア。今回商品名は「S.H.Figuarts マンダロリアン(ディン・ジャリン)」と言います。
ややこしいんですがボバ・フェットの方は本名。けれどマンドーは“マンダロリアン野郎”みたいな意味で本名ではない。そのマンドーの本名が“ディン・ジャリン”なのです。マンダロリアンはその教義において人前で仮面を外すことはありません。これだけ自分を伏せているから本名を名乗ることもない。
仮面を外す時はよほどの事情がある時であり、マンドーはディン・ジャリンとしての顔を見せるのです。
今回のこのフィギュアは、そのディン・ジャリンの頭部が付いています。
ディン・ジャリンを演じているのは『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011-2019年)、『ナルコス』(2015-2017年)、『ワンダーウーマン1984』(2020年)のペドロ・パスカル。
劇中、マンドーが仮面をとってディン・ジャリンになる時は、とてもドラマチックな場面ということであり、中でも最も感動的だったのは、シーズン2最終回である、ザ・チャイルドことグローグーとの別れのシーンです。
このアイテムにはグローグーのフィギュアもついているので、あの名シーンを再現できるのです。
一方、ボバ・フェット。
このボバ・フェットにも仮面をとった時の素顔パーツが付いてきます。この役を演じるのは『アクアマン』(2018年)の父親役でも有名なテムエラ・モリソンで、彼の顔を模したパーツです。
これってすごく画期的なことなのです。先にも書いたように、このキャラ自体は40年以上も前にデビューしたのでたくさんのおもちゃが発売されています。しかしテムエラ・モリソン顔のボバ・フェットのフィギュアというのはまだ出ないはずなのです。なぜかというと、
●そもそもボバ・フェットが素顔を見せるシーンというのは『帝国の逆襲』『ジェダイの復讐』にはありません。従ってボバ・フェットの素顔というのは明らかにされていないから「素顔付きボバ・フェットのフィギュア」というもの自体が出ていない。
●『クローンの攻撃』にボバ・フェットの父ジャンゴ・フェットが登場。ジャンゴ・フェットは素顔を見せており、このジャンゴを演じていたのがテムエラ・モリソンだったのです。さらに、ここでボバ・フェットはジャンゴ・フェットのクローンということが語られる。
つまりファンの間では「ボバ・フェットの顔はジャンゴ・フェットと同じ(テムエラ・モリソンの)顔」というのは“暗黙の了解”だったわけですが、この『マンダロリアン』シーズン2において、初めてテムエラ・モリソンが正式にボバ・フェットを演じたのです。今回のフィギュアはこの記念すべきキャスティングを踏まえての商品化でもあるわけです。
素顔パーツも嬉しいですが、このキャラたちは基本“仮面”姿。もちろんこの状態でもたっぷり遊べます。
仮面ゆえに表情がありません。だからちょっとしたポーズの付け方とかウェポンの持たせ方で彼らの気持ちを表現していく楽しさがあります。僕がぐっときたのは後ろ姿。戦いの中に身を投じてきた者たちの物語を十分感じさせます。
そして両者とも中世の騎士っぽい。このテイストこそ重要なポイント
「スター・ウォーズ」の世界において、ジェダイの騎士たちはファンタジー系&オリエンタル・テイストのいでたち。それに対しストームトルーパーやダース・ベイダーはいかにも宇宙SF系&ちょっとメカっぽいです。しかしマンダロリアンはそのどちらでもない。西洋甲冑のスタチューのようです。だからインテリアとして飾るには最適かもしれませんね。
Text: 杉山すぴ豊
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