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「S.H.Figuarts 《FINAL BATTLE》EDITIONシリーズ」
杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.8
「S.H.Figuarts 《FINAL BATTLE》EDITIONシリーズ」
2021.01.15
“アメキャラ系ライター”杉山すぴ豊氏が、独自の視点からシネトイ(洋画フィギュア)を語ります。
気に入ったヒーロー映画やモンスター・ムービーのキャラを手元においておきたいという人は多いハズ。BANDAI SPIRITSのコレクターズアイテムブランド「TAMASHII NATIONS」さんの洋画フィギュアはまさにこうした願いをかなえてくれます。その魅力を映画ライターの視点で語っていきたいと思います。
今回はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の集大成『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)のファイナル・バトルシーンをイメージした3商品についてご紹介します。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のファイナル・バトルシーンを観た時の興奮は今でも忘れることができません!「そうそう、これを観たかったんだあ!」と誰もが思ったでしょう。心の中で「待ってました!」と叫んだことでしょう。これぞクロスオーバーの醍醐味です。
前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)でほぼすべてのMCUヒーローが出そろうわけですが、あの作品よくよく見直すと宇宙(タイタン星)でサノスと戦う組と地球(ワカンダ)でサノス軍と戦う組とクライマックスが2つの舞台に分かれています。そうヒーローたちは沢山登場するのですが、ヒーロー全員が一堂に会するシーンはないんですね。アイアンマンとキャプテン・アメリカが顔を合わせることはなかったですから。
しかし『アベンジャーズ/エンドゲーム』のクライマックスでは、ある重要な二人のヒーローを除いてMCUのヒーローたちが集結します。
そしてキャプテン・アメリカが宣戦布告する。“アベンジャーズ・アッセンブル”と。
このセリフをここで使うとは!“アベンジャーズ・アッセンブル”というのはコミックにおいて、アベンジャーズの決めセリフとしてあまりにも有名です。
日本におけるアメコミ研究の第一人者 小野耕世氏は、翻訳版の中でこの台詞を“アベンジャーズ集結せり!”と訳しています。アベンジャーズのメンバーが全員集まった時の名乗りの言葉。日本のヒーローで言えば“5人そろってゴレンジャー!”みたいなことです。
僕は2012年の『アベンジャーズ』が公開された時に、当然このセリフが出てくるものと思っていました。しかし使われなかった。2015年の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では最後にキャプテン・アメリカが言いそうになるのですがそこは描かれない。
一体いつ言うのか?そして満を持して『アベンジャーズ/エンドゲーム』で使われたのです。
このセリフを聞くことが出来た時鳥肌が立ちました。2012年に『アベンジャーズ』の映画が出来た時から7年後のこのクライマックス・シーンに使うと決めていたのなら、なんという構成力でしょう。
そしてこのシーンで重要なのは、キャプテン・アメリカがこのセリフを言うきっかけになるのは、彼の手にムジョルニアが戻ってきた時なのです。
ムジョルニアはマイティ・ソーの武器です。いや武器と言っては失礼か。それ以上のもの、相棒です。そしてムジョルニアが認めた真の勇者しか持つことが出来ません。キャプテン・アメリカにはその資格があったのです。
この伏線は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』にでてくるわけですが、ここでそうくるか!とまた気持ちよくつながる。
今回ご紹介する「S.H.Figuarts キャプテン・アメリカ -《FINAL BATTLE》EDITION-(アベンジャーズ/エンドゲーム)」にはムジョルニアがついてきます。さらにサノスに壊された盾も。
この壊れた盾を左手にはめ、右手にムジョルニアを持たせて“アベンジャーズ・アッセンブル”と叫んだキャプテン・アメリカを再現させてみてはいかがでしょうか?
ところでこのムジョルニア、巨漢のソーが持つと小槌っぽいですが、スリムなキャプテン・アメリカが持つと巨大なハンマーっぽく見えますね。
今回はムジョルニアの電撃を使うシーンを再現するためエファクト・パーツがついています。キャプテン・アメリカというヒーローは強化された肉体で戦うヒーローなので光線とか出したりしないわけですから、通常はエファクト・パーツ不要のフィギュアのハズ。だからこういう付属品がついてくるフィギュアはまれ。エファクト・パーツはとても綺麗ですが、盾は戦いの臨場感を出すため汚れています。
このファイナル・バトルでスパイダーマンが復活します。この時着ているのはアイアン・スパイダー・スーツです。それを再現したフィギュアが「S.H.Figuarts アイアン・スパイダー -《FINAL BATTLE》EDITION-(アベンジャーズ/エンドゲーム)」。
アイアンマンが設計したからアイアン・スパイダーと言われています。これはコミック版のシビル・ウォーで初登場。コミック版では背中に3つの人工アーム=スパイダー・レッグがついているのと、カラーリングはアイアンマンを踏まえ金(黄色)と赤ベースですが、MCU版ではスパイダー・レッグは4本。(本来のクモは8本脚ですからピーターの手足を入れるとちょうど8本)。またカラーリングもスパイダーマンらしい青と赤をメタリックに仕上げています。
このアイアン・スパイダーは『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)のラストでちらっと登場しトニーがピーターにプレゼントしようとしますが彼は辞退します。
その理由は、アイアン・スパイダーは高性能な戦闘アーマーであり、“あなたの親愛なる隣人”としての道を選んだ、つまり“街の人々を守るヒーローのスパイダーマン”には相応しくないと考えたからでしょう。
逆に『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、凶暴なエイリアン軍団とのバトルですからアイアン・スパイダーを装着しないと戦えないわけですね。こうしてフィギュアになるとわかるのですが、アイアン・スパイダーは『スパイダーマン』 東映TVシリーズ版より、むしろ東映の宇宙刑事に近い印象です(笑)。
このフィギュアにはさらにアイアン・スパイダーの戦闘力がUPした時の「インスタント・キル(瞬殺)」モードの時の表情=目が赤くなる、が再現できます。スパイダーマンというのはマスクを被っているので表情がわからないわけですが、こうして目の色を変えるだけ彼の感情が伝わる。
劇中、サノスのインフィニティ・ガントレットをもって戦場をかけぬけるシーンがあります。華奢なスパイダーマンがンフィニティ・ガントレットを持つことでサノスの巨大さがよくわかる。このフィギュアでも再確認できます。
そして「S.H.Figuarts アイアンマン マーク85 -《FINAL BATTLE》EDITION-(アベンジャーズ/エンドゲーム)」です。
MCUにおいてトニーが装着する最後のアイアンマン・スーツです。
フィギュア自体の完成度も素晴らしいですが、やはり『アベンジャーズ/エンドゲーム』での、この後の展開を知っていると特別な想いがわきあがってくるアーマーです。
アイアンマンのアーマーはナノ・テクノロジーを使っているので、自由自在にアーマーを変形できるという設定で、こうして背中にという、ブラスター発射装置を作り出すことができます。
アイアン・スパイダーの背中からのびるスパイダー・レッグもこの技術を応用したことがわかります。
アイアンマンにナノ・ライトニング・リフォーカサーをつけて、アイアン・スパイダーにスパイダー・レッグをつけて並べると迫力が出るでしょう。
ただ、これら2つのフィギュアの組みあわせで再現して欲しいのはマスクをとった、つまりトニーの顔とピーターの顔の時の状態で、トニーとピーターが再会した時のシーンです。ピーターにとっては一瞬の余白ですが、トニーにとって失われた5年間を経ての再会なのです。ピーターを強く抱きしめるトニーが印象的でした。
今回の3体のフィギュアは、
キャプテン・アメリカはミリタリー・フィギュア。
アイアン・スパイダーはメタル・ヒーロー・フィギュア。
アイアンマンはロボット・フィギュア。
的にバラエティ豊かですが、それぞれに素顔=スティーブ、ピーター、トニーのパーツがついているのが嬉しい。
「MCUで大切なのはコスチューム姿だけではなく、そのコスチュームをつけた主人公たちの生の人間部分をどれだけ感情移入できるように描くかなんだよ」
これは僕がMCUのプロデューサーでマーベル・スタジオの社長であるケヴィン・ファイギ氏にインタビューした時、彼が言っていた言葉です。まさにこれらのフィギュアはその生の人間部分も丁寧にかつ想いを込めて見事に再現していますね。
Text: 杉山すぴ豊
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