TAMASHII NATIONS PRESENTS シネトイ魂!

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.6
「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」

2020.10.30

“アメキャラ系ライター”杉山すぴ豊氏が、独自の視点からシネトイ(洋画フィギュア)を語ります。

第6回は、11月6日にネットショップ・一般店頭他で予約がスタートする「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」をテーマにお届けします。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.6 <br />「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」

気に入ったヒーロー映画やモンスター・ムービーのキャラを手元においておきたいという人は多いハズ。BANDAI SPIRITSのコレクターズアイテムブランド「TAMASHII NATIONS」さんの洋画フィギュアはまさにこうした願いをかなえてくれます。その魅力を映画ライターの視点で語っていきたいと思います。

今回は『アイアンマン』(08年)以降、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を支えてきたニック・フューリーです。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.6 <br />「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」

ニック・フューリーはマーベル・コミックが誇る兵士にしてスパイです。
1963年に『Sgt. Fury and his Howling Commandos(フューリー軍曹とハウリング・コマンド部隊)』というコミックでデビューしました。タイトルからわかるように戦争物。第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台に陸軍の兵士ニック・フューリーが活躍します。アメコミではこういう戦争アクション物もかつては人気ジャンルでした。
またこのころ第二次世界大戦を描いた『ナバロンの要塞』(61年)や『史上最大の作戦』(62年)『大脱走』(63年)等の戦争映画も流行っていたのでその流れもあったのかもしれません。

そしてマーベルは面白い戦略に出ます。同じく63年に、このニック・フューリーが現代では諜報部員として活躍しているという設定で、当時人気だった“ファンタスティック・フォー”というヒーロー・コミックの中に登場させ、さらに65年には彼がスーパー諜報組織S.H.I.E.L.D.のエージェントとして悪の秘密結社ヒドラ党と戦っているというシリーズを発表したのです。

つまりニック・フューリーの若き日を描く第二次世界大戦物と、彼がベテランのスパイとして活躍するスーパーアクション物の2つの物語が並行して出版されたわけですね。
65年当時は映画『007』が大人気で、スパイ・アクション映画ブームが起こっていたのでその影響を受けてのことでした。

この現代版のニック・フューリーは第二次世界大戦版と差別化するため、白髪がまじり(第二次世界大戦の時より当然年をとっているわけですから)、さらに左目に失いアイパッチをしているというデザインになりました。僕がこのニック・フューリーの存在を知ったのは、翻訳が出ていた『キャプテン・アメリカ』のコミックの中。ここではS.H.I.E.L.D.とニック・フューリーはキャプテン・アメリカを助ける存在として描かれています。1998年には彼を主人公にしたTV映画『Nick Fury: Agent of S.H.I.E.L.D.』(日本劇場未公開)が作られ、TVドラマ『ナイトライダー』『ベイウォッチ』で人気のデビッド・ハッセルホフがフューリーを演じました。

と、ここまで書いて「え?デビッド・ハッセルホフって白人ですよね。ニック・フューリーって黒人でしょ」と思われるかもしれません。その通りなんです。実はマーベルは2000年に新たな読者層の開拓をねらった“アルティメット・マーベル”という世界観の中で、X-MENやスパイダーマン等の物語をゼロからスタートさせました。

従来のマーベル・コミックのお話とこの“アルティメット・マーベル”はパラレルワールド的な位置づけになっています。(いわゆるマルチバース)。そして、この “アルティメット・マーベル”の世界に登場するニック・フューリーは黒人、しかも劇中、わざわざ “サミュエル・L・ジャクソンに似てる”とまで言われる人物として登場するのです。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.6 <br />「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」

「魂のデジタル彩色」技術の採用により、今にも喋りだしそうなリアル仕上がりに。

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)版のニック・フューリーは、この“アルティメット・マーベル”版をモチーフにしています。しかもコミックの設定を活かし、サミュエル・L・ジャクソンをキャスティングしました。

MCUにおけるニック・フューリーの登場は、ファンにとって衝撃的かつ狂喜乱舞させるものでした。MCU1作目の『アイアンマン』(08年)の最後、エンド・クレジットの後にいきなり登場しアイアンマンことトニー・スタークを“アベンジャーズ”に誘う、という流れです。

ニック・フューリー(しかも演じるはサミュエル・L・ジャクソン)は公開まで伏せられていたので本当にサプライズ!後にMCU名物となる“おまけシーン”の先駆けであり、そしてこの『アイアンマン』がまさかアベンジャーズにまで広がる!という夢のような話がここで示唆されたわけです。
そうこの『アイアンマン』にニック・フューリーが登場した時からMCUが始まった、といっても過言ではないわけです。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.6 <br />「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」

発売済みのアイアンマンやキャプテン・アメリカと組み合わせることで、『アベンジャーズ』の世界がひろがる。

僕は『アベンジャーズ』のプロモーションで来日したケヴィン・ファイギ氏(マーベル・スタジオの社長でMCUのプロデューサー)にインタビューする機会があったのですが、
『アイアンマン』の最後にニック・フューリーを登場させたのは、最初から『アベンジャーズ』を作る構想だったのか?
と聞いたところ、
「正直、あのシーンは”五分五分“でした。つまり『アイアンマン』が大ヒットしたら『アベンジャーズ』を作れるわけですから、あそこでフューリーが登場することはその予告となります。けれど『アイアンマン』がヒットしならなかったらここで終わりなので、そうなったらあのシーンはファンへのちょっとしたサービス、余韻として楽しんでいただければいいなと思ってました」

結果、『アイアンマン』は大ヒットし、MCUが実現し、僕らはニック・フューリーにスクリーンで何度も再会できるようになったわけです。

さて今回のフィギュアは『アベンジャーズ』に登場したニック・フューリーをモチーフにしています。これは非常に正しい。MCUの中で強烈なインパクトを残すフューリーですが基本はサポート・キャラなのでそんなには活躍しないことも多い。
ただし『アベンジャーズ』1作目のニック・フューリーはアクションの見せ場も多くかっこいい。フィギュアにするならこのニック・フューリーでしょう。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.6 <br />「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」

武器パーツも付属し、ガンアクションのポージングも可能。

このフィギュアで感心したのはニック・フューリーの眼光の鋭さが見事に再現されていることです。
隻眼のキャラだからこそ開いている右目が目立つ。ニック・フューリーはヒーローたちの文字どおり“お目付け役”でもあり、悪の陰謀を見抜くすご腕スパイなので、とにかく目力が強いことがポイントです。このフィギュアをデスクトップに飾ったら本当にニック・フューリーに見られている(いや、にらまれている笑)ような気持になるでしょうね。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19年)でスパイダーマンことピーターがニック・フューリーの前でたじたじだったような、あんな気持ちになるかな。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.6 <br />「S.H.Figuarts ニック・フューリー(アベンジャーズ)」

映画さながらの鋭い眼光も、そっくりに再現。

ニック・フューリーはこれからのMCUでもまだまだ登場し、また彼を主人公にしたドラマ・シリーズが作られる、という噂もあります。ニック・フューリーの目から逃れることはできませんが、僕らもニック・フューリーの今後の活躍から目が離せません。MCUのフィギュアをコレクションするなら、その立役者であるニック・フューリーもぜひ手にとってみてください。

Text: 杉山すぴ豊

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