TAMASHII NATIONS PRESENTS シネトイ魂!

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.4
「S.H.Figuarts ドクター・ストレンジ -《BATTLE ON TITAN》 EDITION-(アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー)」

2020.08.28

“アメキャラ系ライター”杉山すぴ豊氏が、独自の視点からシネトイ(洋画フィギュア)を語ります。

第4回は、9月1日にネットショップ・一般店頭他で予約がスタートする「S.H.Figuarts ドクター・ストレンジ -《BATTLE ON TITAN》 EDITION-(アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー)」をテーマにお届けします。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.4 <br />「S.H.Figuarts ドクター・ストレンジ -《BATTLE ON TITAN》 EDITION-(アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー)」

気に入ったヒーロー映画やモンスター・ムービーのキャラを手元においておきたいという人は多いハズ。BANDAI SPIRITSのコレクターズアイテムブランド「TAMASHII NATIONS」さんの洋画フィギュアはまさにこうした願いをかなえてくれます。その魅力を映画ライターの視点で語っていきたいと思います。

今回は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(19年)でも渋い存在感をみせたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)きっての魔法使い、ドクター・ストレンジです。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.4 <br />「S.H.Figuarts ドクター・ストレンジ -《BATTLE ON TITAN》 EDITION-(アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー)」

頭部パーツの造形・彩色を見直し、ドクター・ストレンジの深みのある表情がよりリアルに。

ドクター・ストレンジは1963年に刊行された“Strange Tales”誌110号でデビューしました。
当時のマーベルはハルク、マイティ・ソー、アントマン、ワスプ、スパイダーマン、アイアンマン、アベンジャーズをすでに世に出していました。(キャプテン・アメリカは1964年に発表されたアベンジャーズのエピソードで復活しますが、もともと1941年に登場したヒーローです)

当時のマーベルはいかにヒーロー同士の物語を差別化することに工夫を凝らしていました。ハルクは怪物だしソーは神様。アイアンマンは大富豪のダンディなオヤジですがスパイダーマンは貧乏高校生。そして宇宙から来る侵略者たちと戦う英雄もいれば国際犯罪組織から世界を守るヒーローもいます。

こうした中、ドクター・ストレンジは魔法使いであり、魔界からの脅威に立ち向かう存在として描かれます。SF的世界観が主流だったマーベルにダーク・ファンタジー的要素を持ち込んだことが大きく、これによりマーベル・ユニバースがより大きく広がったのでしょう。ドクター・ストレンジはそのユニークさがウケ人気コミックであり、2016年に『ドクター・ストレンジ』として、待望の映画化が叶いました。それまで何度かマーベルのヒーロー・アニメに登場したり、1978年に一度、実写のTV映画が作られていますが、MCUにもなかなか登場しなかった。

その理由はいくつか考えられるのですが、ドクター・ストレンジというのはとても雰囲気が大事なヒーローだからではないでしょうか? というのもキャラ・デザイン的には、髭を生やしたおじさんがオリエンタルな衣装を着ている、ですよね。一つ間違えればギャグにしかならない。アイアンマンやスパイダーマンみたいにヒーローっぽくはない。けれどドクター・ストレンジのコミックが人気だったのは、このヒーローならではの魔法大戦を当時のクリエーターが素晴らしいアートで描いたことです。だから映画的にもVFXの技術が進歩しないとあの魔法シーンが描けない。
一方、MCUはロバート・ダウニー・Jrをアイアンマンことトニー・スタークに起用するという絶妙なキャスティングで大成功し、以後、俳優とヒーローの最適・最高なマッチングにこだわってきました。
そんなMCUにとってもドクター・ストレンジをどの役者さんに演じさせるか?は特に大きなチャレンジだったでしょう。というのもこのキャラクターは100%顔出しですから、役者の力量・魅力がストレートに反映されるのです。結論から言うとベネディクト・カンバーバッチを見つけたことは大正解。当時のMCUは彼のスケジュールにあわせて『ドクター・ストレンジ』の公開日をわざわざ変更したといいますから、彼以外に考えられなかったのでしょうね。

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ソーサラー・スプリームたるドクター・ストレンジの代名詞である魔法は、多彩なエフェクトパーツで再現

コミックのドクター・ストレンジは“元々鼻持ちならないエリートが改心しヒーローになる”という流れでした。こういうニュアンスもカンバーバッチは実にうまく演じてましたよね(笑)。というわけでMCU版ドクター・ストレンジのフィギュアであるからには、カンバーバッチにどれだけ似ているかが問われます。今回のフィギュアはドクター・ストレンジだけではなくカンバーバッチのファンも欲しくなる納得の造形といえるでしょう。さらにこのヒーローは指の動きで様々な魔法を起こしますが、それを自由に再現できるよう手のパーツが多いのも嬉しい。そして『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の中でも最も印象的だった、“空中浮揚座禅”を組みながら瞑想状態に入り、サノスとの戦いの行く末を霊的にシミュレーションする、あのシーン(ここでサノスに勝利できる確率は1/1400605と導きだすのです)が再現できることです。アクション・フィギュアの中で主人公が目をつぶっているヘッドがついているって異色だと思うのですが、このドクター・ストレンジについては必要なパーツと言えるでしょう。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.4 <br />「S.H.Figuarts ドクター・ストレンジ -《BATTLE ON TITAN》 EDITION-(アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー)」

アガモットの眼(タイムストーン)パーツとエフェクトを差し替えることで、劇中のシーンを再現

今回のこのフィギュア実はもう一人、MCUキャラがついていてお得なんですが、気づかれました?そうあのマント(ケープともいいます)です!
映画をご覧になった方はおわかりでしょうが、ドクター・ストレンジのあのマントは単なる衣装ではなく、意志と知能を持った“キャラ”なのです。映画『アラジン』(92年)の魔法の絨毯を参考にしたと言われていますが、ドクター・ストレンジとこのマントはバディ関係にあります。このマントが布で、しかもワイヤー付きで、自由にアレンジできる仕様でついていきます。コミックでもドクター・ストレンジのその時の怒りや決意を、マントのちょっとした描き方で表現してきました。重要アイテムのマントをいじれるのも嬉しいですね。

杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.4 <br />「S.H.Figuarts ドクター・ストレンジ -《BATTLE ON TITAN》 EDITION-(アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー)」

襟を除き布製になったマントは、首元とすそにワイヤーを内蔵。表情豊かなポージングが可能です。
『ドクター・ストレンジ』でマントの魅力に気づいたファンも多かったのでは?

ドクター・ストレンジは2022年に『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス(原題:Doctor Strange in the Multiverse of Madness)』という作品でスクリーンに帰ってくる予定です。彼との再会を楽しみにしつつこのフィギュアから神秘の力をもらいましょう。このドクター・ストレンジはアイアンマンことトニー・スタークと並んで2大髭ヒーローですから2つを並べて飾って髭仲間というのも楽しそう。さらに予算があるという方は、サノスのフィギュアと、このドクター・ストレンジを複数個購入して、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、ドクター・ストレンジが分身してサノスと戦う、あのバトル・シーンを再現する?

Text: 杉山すぴ豊

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