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「S.H.Figuarts サノス -《FINAL BATTLE》 EDITION-(アベンジャーズ/エンドゲーム)」
杉山すぴ豊の洋画フィギュア論 vol.3
「S.H.Figuarts サノス -《FINAL BATTLE》 EDITION-(アベンジャーズ/エンドゲーム)」
2020.07.31
“アメキャラ系ライター”杉山すぴ豊氏が、独自の視点からシネトイ(洋画フィギュア)を語ります。
第3回は、7月31日に魂ウェブ商店で予約がスタートする「S.H.Figuarts サノス -《FINAL BATTLE》 EDITION-(アベンジャーズ/エンドゲーム)」をテーマに、本コラムのための撮りおろし画像と共にお届けします。
気に入ったヒーロー映画やモンスター・ムービーのキャラを手元においておきたいという人は多いハズ。BANDAI SPIRITSのコレクターズアイテムブランド「TAMASHII NATIONS」さんの洋画フィギュアはまさにこうした願いをかなえてくれます。その魅力を映画ライターの視点で語っていきたいと思います。
今回は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年)に登場する、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が誇る最強のキャラクター、サノスです。
インフィニティ・サーガで絶対的な存在となったサノスが、ついにS.H.Figuarts マーベルシリーズの《FINAL BATTLE》 EDITION に登場
2012年の『アベンジャーズ』はヒーローたちがスクリーンで共演する、というファンの願いをかなえたくれた夢のような作品でした。それだけでも十分満足なのに、本作ではさらに嬉しい仕掛けがあったのです。それがエンド・クレジットの間に挿入された、いわゆる “おまけシーン” でサノスの存在が示唆されたことです。そうアベンジャーズはいずれサノスと激突する! ファンにとっては新たなドリームがここで示されたわけです。ただファンにとっては夢の始まりでも、物語的には悪夢の始まりです。サノスは1973年の『THE INVINCIBLE IRON MAN(アイアンマン)』55号でデビューしました。そうだからコミック史的にはアベンジャーズではなくアイアンマンのストーリーの中に登場したわけです。もっともこの号ではサノス自体はそんなに活躍しない。この号のメインはドラッグスの方でここに出てくるのはサノスの替え玉ロボットでした。またサノスも巨人ではなくアイアンマンと同じぐらいの身長。従って大々的にフィーチャーされていたわけではありません。
その後、サノスはちょくちょくマーベル・コミックに登場するのですが、彼が人気を得たのはなんといっても1991年から刊行された、マーベル・ヒーロー共演(クロスオーバー)の『The Infinity Gauntlet(インフィニティ・ガントレット)』でしょう。デビュー時よりもはるかに威圧感のあるキャラになっています。ほぼこのストーリーがMCUにおけるサノスに影響を与えています。すなわちサノスがインフィニティ・ジェム(MCUではインフィニティ・ストーン)を6つ手に入れて、それをインフィニティ・ガントレットにはめて全銀河の半分の生命を消してしまいます。ヒーローたちがその世界を取り戻すために戦うというものです。
日本でも90年代半ばにマーベル系のコミックを紹介していた“マーヴルX”という雑誌(素晴らしい雑誌でした!)に翻訳版が収録されています。僕は初めてこの物語を読んだとき、指をパチンとならすだけで宇宙の半分が消えてしまうという設定にちょっと笑ってしまったのですが、同時にすごく神話っぽいなと思った印象があります。アメコミ・ヒーロー物はスーパーヒーローというフォーマットを借りた人間ドラマであると同時に現代の神話なのです。
通常の手首に加え、ダメージ塗装が施されたナノガントレット(ストーン部分に注目!)が付属
『アベンジャーズ』での顔みせを皮切りに、サノスの存在はMCU作品で何度か示され、本格的に登場するのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14年)からです。ジョシュ・ブローリンがサノスを演じるのもここから。『アベンジャーズ』のカメオの時は別の俳優さんが演じていたのです。
そして『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で主役となります。そう主役です。この作品はタイトルこそアベンジャーズですが、主人公はサノスと考えた方がいい。サノスが自分の恐るべき計画を実現するまでを描いた作品です。だから『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』がヒーローの敗北で終わる、MCU初の、ヒーロー達が立ち向かった相手側が勝利する映画になるのは当然といえば当然。
製作陣もそれをわかっていてこの映画の最後にTHANOS WILL RETURN(サノスは帰ってくる)とヒーロー扱いしたテロップを入れています。そもそもコミックも『THANOS:The Infinity Gauntlet』というのが正式なタイトルなのでサノスがメインなのです。
今回のアクション・フィギュアで注目したいのは顔面パーツ。怒れるサノス、なんともいえない哀愁を帯びた時の顔が再現されていますね。MCUの中でも喜怒哀楽の表情を沢山見せてくれるサノスなので、どの顔を選ぶかで全く違うサノスが楽しめる。
他のヒーローたちと組み合わせてて武人サノスを演出してみてもいいのですが、決戦を前にひとりポツンと座っているあのシーンが再現できるのも嬉しい。
サノスは恐るべきパワーを持つ魔人ですがどこか人間味あるのです。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』においては、まさにこの場面ではないでしょうか?
サノス本体や武器にくわえ、劇中で腰かけていたパイプや、剣を地面にさした状態を再現するためのパーツなどジオラマパーツが付属する、大ボリュームのアイテム。
考えてみればサノスってどこか抜けたところがありますよね。
あれだけ強いハズなのにスパイダーマンに顔面に蜘蛛糸ひっかけられて慌てたり、そもそもインフィニティ・ガントレットで宇宙が狭くなったからとといって生命の半分消しちゃうのであれば、みんなの大きさを2分の1にするとか、もっと平和的な方法もあったでしょう(ちなみに原作コミックで、サノスが全生命の半分を消してしまう真の動機はもっとパーソナルで、微笑ましい。機会があれば読んでみてください)。
そうサノスといえど完璧ではない。これはマーベル・コミックの基礎を作ったスタン・リーが「この世に完璧な人間なんていない。だから完璧なヒーローはいない。おなじように完璧な悪役なんていないんだよ」というスタンスに基づいているのかもしれません。
このフィギュアを部屋に飾るとき、とにかく励まされたい人は武具をつけて剣を持ち鬼神のようなサノスを。
ちょっと癒されたい人は、土管(?)に座ってふーと一息ついているサノスを、試してみてください。
受注中の「S.H.Figuarts アイアンマン マーク85 -《I AM IRON MAN》 EDITION- (アベンジャーズ/エンドゲーム)」などと組み合わせれば、胸が熱くなる名シーンを、自分の手で表現することも!
最後に思い出話を。2012年、『アベンジャーズ』のプロモーションでケヴィン・ファイギ氏(MCUの仕掛人で、現マーベル・スタジオの社長)が来日した際、インタビューする機会がありました。
その時、僕はコミック版の、アメリカのサノスのフィギュアを彼に見せて「この先、彼は映画に登場するんですか?」と聞いたらケヴィンは「そうでなきゃ、あのカメオ・シーンはつけませんよ」と笑って答えてくれました。当時、日本でサノスって知っている人、わかる人はすくなかったでしょう。
あれから8年。S.H.Figuartsから映画版が出るぐらい、サノスが人気キャラになるとはあの時、想像できませんでしたね(笑)。
Text: 杉山すぴ豊
Photo(本記事撮りおろし画像のみ): 静メカ
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